デュピクセント
デュピクセントとは
アトピー性皮膚炎の病態で重要なTh2(タイプ2)炎症の主たるサイトカインである、IL-4の受容体(IL-4Rα鎖)に対するモノクローナル抗体です。 少し前は、アトピー性皮膚炎は皮膚バリア機能不全が原因で(例えば、フィラグリンの遺伝子異常)、Th2炎症はその結果であると言われていましたが、皮膚にTh2炎症が起こることで、皮膚バリア機能が低下する(例えば、フィラグリンの発現が低下する)ことが分かってきました。つまりTh2炎症を抑えると、皮膚バリア機能も回復することになります。
デュピルマブを開始すると、早い時期から痒みが治まってくるのが特長で、すごく楽になった、と言われます。引き続いてだんだんと皮膚の状態も良くなってくることが多いです。副作用は結膜炎が多いですが、重篤な副作用はあまりありません。大変良い薬なのですが、アトピー性皮膚炎患者さんであれば誰でも使えるか、といえばそうではありません。
デュピクセントの費用
高額な薬剤ですが、2020年4月1日からの薬価改定で約20%減額になっています。薬価は1本66356円です。3割負担で、最初の月に2回投与したとすると、最初の月が6万円(診察代など諸経費込み)くらい、維持期に入ると4万円弱が毎月かかることになります。
デュピクセントの副作用
デュピクセントには結膜炎などの副作用の報告はありますが、そこまで頻度は高くありません。きちんとフォローさせていただければ、ステロイドの飲み薬などよりも安全に使用できます。
デュピクセントについてよくある質問
デュピクセントはどのようなアトピー患者さんが使えますか?
デュピクセントは高価なお薬ですので誰でも使っていいという薬ではありません。「施設要件」、「前治療要件」、「疾患活動性の状況」という制限があります。「施設要件」は、担当医が皮膚科専門医やアレルギー専門医であれば問題ありません。前治療要件が重要で、ア 成人アトピー性皮膚炎患者であって、アトピー性皮膚炎ガイドラインで重症度に応じて推奨されるステロイド外用剤(ストロングクラス以上)やカルシニューリン阻害外用薬による適切な治療を直近の6ヶ月以上行っている。イ 成人アトピー性皮膚炎患者であって、ステロイド外用剤やカルシニューリン阻害外用薬に対する過敏症、顕著な局所副作用若しくは全身性副作用により、これらの抗炎症外用薬のみによる治療の継続が困難。と記載されています。つまり、適切なステロイドの外用をしていてもコントロール不良な場合や、副作用でこれ以上ステロイド外用剤が使えない場合に限るということです。ステロイドを塗るのが怖いから、ステロイドを塗るのが嫌だから、または面倒くさいから、と言うような理由では使えません。
デュピクセントの自己注射が怖いのですが?
デュピクセントを2週間に1度当院に打ちに来ていただき治療することももちろんできます。しかし、自己注射に比べると自己負担額は高くなります(来院して注射:月約4万円、自己注射:月約2.5万円(2年目以降 高額医療+多回数該当の場合))ので、ご注意していただきたいと思います。
デュピクセントは何か月までまとめて処方することができますか?
自己注射の場合は、1回の受診で4本(8週間分)までとなっております。
デュピクセントは初診でも投与することができますか?
デュピクセントの投与基準を満たしていれば当日でも治療を開始できるようにしております。しかし、今までの治療を見直すことでデュピクセント無しでも改善する方もいらっしゃいます。まずは、しっかり診察をさせて頂き治療について相談させて頂けたらと思います。
デュピクセントは何歳から投与できますか?
2023年9月より生後6か月の小児から使用できるようになりました。ただし、使用について前治療要件などもありますので、希望される方すべてにいきなり投与できるわけではありません。お気軽にご相談ください。