掌蹠膿疱症
■掌蹠膿疱症とは?
■掌蹠膿疱症の原因
■掌蹠膿疱症の治療
■掌蹠膿疱症についてのQ&A
ウミが溜まっていますが、ばい菌が入っているのですか?
この皮膚病のウミの中には細菌(ばい菌)や真菌(カビ)などの菌はいません。したがって、手足から体のほかの部位に感染することはありません。しかし、ウミを自分で出そうとして針や爪楊枝でつきますと、二次的に細菌が増え、腫れて痛くなることがありますので、注意して下さい。
手や足だけでなく、体に出ることはありませんか?
重症な患者さんでは下腿(すね)や膝、稀ですが赤いぶつぶつが体にも出ることがあります。私たちは、これらをまとめて掌蹠外皮疹と呼んでいます。掌蹠外皮疹が認められる症例は比較的少なく、一般に、手や足より容易に治療することができるので、あまり心配しなくてよいと思います。
内臓が悪くてこの皮膚病にかかるのですか?
外の環境と接する扁桃腺や歯、鼻などに細菌による慢性炎症があると掌蹠膿疱症が生じることがあります。私たちはこのような病変を病巣感染と呼んでいます。自覚できる症状がなくても、耳鼻科や歯科の専門の先生の診察で初めて病巣感染がみつかることもあります。
金属が悪さをして出ることもあるようですが、ほんとうですか?
海外での報告は少ないのですが、日本では歯科金属(パラジウムなど)に対するアレルギーが引き金となり掌蹠膿疱症が発症した事例が報告されています。病巣感染がないのに治りにくい場合や、金属アレルギーが疑われる場合は、パッチテスト(疑われる金属を実際に皮膚に貼り皮膚反応があるかどうか調べる検査)を受けて下さい。もし、陽性であれば、歯科の先生に相談し、陽性を示した金属が歯科金属に含まれるかどうか調べた上で、歯科金属の交換を考慮します。
どんな治療法がありますか?
病巣感染や金属アレルギーなど、病気を悪化させる要因があれば取り除くようにします。もし、これらの増悪因子がみつからない場合は、対症療法を行ないます。先ず外用療法を選択します。かゆみが強かったり、新しい皮疹がたくさん出る場合は強いステロイド軟膏を使用し、良くなってきたら弱いステロイド軟膏や活性型ビタミンD3軟膏に変更します。皮疹が頑固な場合は紫外線療法や短期間のビタミンA誘導体の内服を行うこともあります。
ずっとステロイドを塗っても副作用は大丈夫ですか?
顔や陰部など角層(皮膚の最表層にある薄い層)が薄い部位では軟膏の吸収がよいため、強力なステロイド軟膏を外用しているとその皮膚が薄くなったり、皮膚が赤くなるなどの副作用があらわれることがあります。しかし、手足は角層が厚いので、副作用は出にくく、もし、副作用があらわれても、外用を中止したり、弱い軟膏に変更すれば心配ありません。また、手足の狭い範囲にステロイド軟膏を塗布したからといって、体のほかのところに副作用があらわれることはありません。
この病気は一生治らないのですか?
患者さんのうち2~3割は病巣感染や金属アレルギーが関与していることがわかっていますので、積極的に検査して、治療すれば掌蹠膿疱症も治癒が期待できます。残念ながら、患者さんのうち7~8割は検査をおこなっても原因を突き止めることができず、対症療法を受けることになります。しかし、安心して下さい。長い間、患者さんの経過をみた研究によりますと、ほとんどの症例が自然に治ってしまうことがわかっています。治るまでの期間は報告者によって異なりますが、平均で3年から7年とされています。ですから、それまで対症療法により、症状を軽くして、生活する上で支障がないようにコントロールしていきましょう。
胸の中央が痛むのですが、心臓や肺が悪いのでしょうか?
この病気に関係して肺や心臓に異常は生じませんが、掌蹠膿疱症の患者さんの約10%で関節や骨に炎症があり、痛むことがあります。この症状は胸骨と鎖骨、肋軟骨の結合部に最も多く認められますが、その他、くびや腰などにも痛みが生じることがあります。症状がひどい場合は、整形外科の先生と相談しながら治療する必要があります。
タバコはやめた方がよいですか。
掌蹠膿疱症の患者さんのうち、約80%の人が喫煙者です。禁煙しても、多くの場合掌蹠膿疱症が治ることはありませんが、この際ですから、健康を考え禁煙あるいは節煙してはどうでしょうか。