# 薬剤アレルギーとは?

# 薬剤アレルギーの原因

# 薬剤アレルギーの治療

# 薬剤アレルギーについてのQ&A

# どんな時に薬疹を疑いますか?

薬を内服して発疹が出た場合にはすぐ薬疹と考えたくなりますが、これは正しくありません。大体薬は具合が悪い時、とくにウイルス感染がある患者さんが内服する場合が殆どなので、薬疹かウイルス感染かの区別が難しい事が多いのです。つまり、ウイルス感染の一つの症状として発疹が出てくる場合、例えば麻疹(ハシカ)のように最初熱が出て、それから発疹が出てくるようなウイルス感染の場合には、ウイルス感染を疑わなければ薬疹と間違って診断されることになります。そのため薬疹と診断するには、薬を内服し始めてから発疹の出現するまでの経過が重要です。新しい薬を飲み始めて1~2週間で出てくる場合には(アレルギー性)薬疹を疑うことになります。薬を中止して発疹が良くなってくる場合には、ますます薬疹の可能性が強くなります。しかし、まだこれだけでは薬疹の診断には十分と言えません。先程述べたウイルス感染の場合でも、自然に発疹が良くなってくるからです。血液検査で白血球のうちの好酸球が増えている場合には、薬疹の可能性が高くなりますが、決定的とは言えません。

# 薬疹の診断はどうやってつけるのですか?

薬疹を診断するのは極めて骨の折れる作業なのです。まず発疹と経過から薬疹を疑った場合、どのような薬の内服を、いつから始めたか、そして発疹はいつ出てきたかを詳細に尋ねます。さらに今まで、薬を飲んで発疹が出たことがあるかを尋ねます。しかし患者さんの多くは“薬を飲んで何か出たことがある”とは話をされても、その内容までは良く覚えておらず、何の薬でどんな発疹が出たかを正確に話せる人は極めて少ないといっても良いでしょう。例えば“今までに何々の薬でスチーブンス・ジョンソン症候群を生じたことがある”と話していただいた場合は、本当に有用な情報となります。その場合には今回内服した薬のなかから、以前に薬疹を起こしたのと類似した薬(成分)を飲んでいないか、を調べることになります。そのようにして原因薬を絞った後に、文献的にそれらの薬がどのような薬疹のタイプを起こしやすいかを調べることになります。それによりさらに原因薬の見当をつけ、様々な検査を行うことになります。ふつうの血液検査では白血球数や、そのうちの好酸球数などが参考になります。しかし一般的にこの検査値なら薬疹を疑うべきという検査法は現在のところありません。  そこで、次に述べるような特殊な検査を行って診断することになります。

# 薬疹と診断するにはどのような検査が行われますか?

患者さんの体を使って行う方法と、血液を使って行う方法とがあります。前者は薬疹がひどい時には行いにくく、軽快してから確認のために行われることが多いようです。そのうち最も良く行われるのは、パッチテストといって原因となった薬を軟膏にして背中に貼るテストです。この方法の場合に注意しなければならないのは、この結果を過大に評価しすぎないことです。薬疹の多くは原因となった薬が体の中で代謝されて生ずるのですが、パッチテストでは薬をそのままを軟膏の形で皮膚に貼るのですから、本当に原因だったとしても陽性に出ない場合(偽陰性)もかなり多いのです。一方、余りに高濃度の薬を貼ると、それだけで刺激反応が起こってしまい、間違って陽性と判定される場合(偽陽性)もあります。しかも余りに高い濃度でパッチテストをすると、本来その薬にアレルギーを持っていない患者さんまで、感作してしまう(つまり新たにアレルギーになってしまう)危険性すらあるのです。  最も確実なのは、もう一度原因薬を内服していただく誘発試験(内服試験)です。しかしこの場合には原因薬をそのまま内服するのではなく、1/10~1/100あたりから投与する方が安全と言えます。重症の薬疹の場合は、次の項で詳しく述べます。患者さんはこの誘発試験をいやがる場合が多いのですが、ここまで行って原因薬を決定しておいてこそ、後から役立つ貴重な情報となるのです。  その点、血液を使って行う検査法は患者自身の負担はありませんが、保険で全てをカバーできないという欠点もあります。この方法は患者さんの血液(リンパ球)と原因薬剤を試験管内で混ぜ、薬剤に対する反応をみる方法です。この方法でも、偽陽性、偽陰性はかなりあり、判定はあくまで他の検査法の結果や臨床症状と照らし合わせて行うべきです。いずれにせよ、ここまでの検査法を行えば、薬疹と診断するための十分な情報が得られるはずです。

# 重症薬疹の場合でも、誘発試験は行うのですか?

これについて欧米のグループの中には、重症薬疹では絶対誘発試験は行うべきではない、と言う意見もあります。我が国でもそのような考え方は根強いのですが、重症薬疹だからこそ原因薬ははっきりさせておかないと危険だという考え方も出来ます。例えば、重症薬疹で経過などから原因薬と推定出来るものは多くの場合数種類(しかもそれも確実とは言えない)程度に絞れる場合が多いのですが、それはあくまで推測に過ぎません。そのような推測の結果を患者さんに説明しても、患者さんは果たしてそれを覚えていて必ず病院にかかる時に話してくれるでしょうか? 後に別の医師を受診した場合、医師の側もそのような不確実な情報では、どれを処方して良いか判断に迷ってしまいます。重症の薬疹を起こした薬は以後絶対に内服しないようにするためには、以下の誘発試験を行っておいた方が良いのです。  しかし重症薬疹の患者さんに誘発試験を行う場合には、いくつかの注意点があります。一つは内服前に必ず血液検査で異常ないかどうか(とくに薬剤の排泄に関連する肝、腎機能)を確認しておく必要があります。もう一つには、薬剤を再投与する際の濃度を極めて少量から行うことです。例えばふつう飲む量の1/1000から始め、その前後で検査成績異常や皮膚に何の発疹も出ないことを確認したうえで、数日後から1/100→1/10と慎重に量を増やしていくことが大事です。最後にふつう飲む量を投与するわけですが、出来れば点滴のルートを確保した上で行う位の慎重さがあって良いと思います。少なくともこのように十分に注意して行えば、たとえ重症薬疹でも問題が生じることはないはずです。しかし、原因薬を内服した場合、発疹が生じてくる可能性のある数時間から数日間程度は様子をみなければなりません。ですので、この誘発試験は医師が手薄になる休日前には決して行わないようにしなければなりません。

# 薬疹を予防するのはどうしたら良いでしょうか?

アレルギー性薬疹の場合、その薬に対するアレルギー反応は一生続くと考えて良いと思います。つまり一度、ある薬で薬疹を起こしたら、その薬はもう一生内服出来ないと考えて良いと思います。となれば、一度アレルギーを起こした薬の名前を、薬を処方される度に必ず提示して、避けてもらう必要があります。そのために我々の施設では、薬疹カードを患者さんにお渡ししています。それには、どの薬でどのような薬疹を生じたのか、そしてそれはどのような検査法で陽性となったのかが書かれています。しかし、その原因となった薬剤が一般の市販薬にも多く含まれている成分であった場合には、患者さん自身が成分表とニラメッコで同じ成分が含まれていないかを十分にチェックする必要があります。このようにしても、患者さんが薬疹カードを呈示するのを忘れてしまえば、間違って原因薬が処方され内服してしまう場合もあります。いずれにせよ、薬疹を予防するためにはしっかりと診断して原因薬を決定しておくことが必要です。そのためには誘発試験まで行っておくことが大事です。さらに原因となった薬のかわりに内服出来る薬を見つけておくことも重要です。しかしそれはあくまでも、その時点で安全な薬ということであり、それとても、内服を続けるうちにアレルギーを起こすようになる可能性もあるということを忘れてはなりません。

# 絶対薬疹を起こさない薬が欲しいのですが?

現在そのような薬はないと断言できます。どんな薬でも頻度は低いながらも、必ずアレルギーを起こす人はいます。薬疹の治療に用いられるステロイド剤に対してさえ、アレルギーを起こす人がいることを忘れてはなりません。多くの患者さんは漢方薬ならアレルギーを起こさないだろうと考えがちですが、決してそうではありません。病院で処方される薬は、どの位アレルギーを起こすかをあらかじめ調べた上で、販売許可されるのですが、民間薬や漢方薬の場合にはこのようなデータがないため、なかなか薬疹の頻度を出すことが出来ないのです。つまり“薬疹を起こさない”のではなく、“起こしていても、それを知ることが出来ない”だけなのです。ですから、こういった民間薬の場合の方が却って危険だとも言えるのです。患者さんの間には、“作用の弱い薬イコール副作用やアレルギーも少ない”という誤った考えがあるようですが、これは正しくありません。作用の弱い薬でも、強い薬と同じように薬疹を起こすと考えた方が良いでしょう。

# 一度アレルギーになった薬を、何とか飲めるようにする方法はありませんか?

これは脱感作といって、一度アレルギーになった(つまり感作)状態から脱する方法と言えましょう。昔からいろいろ試みられていますが、脱感作が絶対に成功するという方法はありません。脱感作の方法として良く知られているのは、ごく少量から薬を再投与し、次第に量を増やしていく方法です。この際、薬といっしょに少量のステロイドの内服を行う場合もあります。いずれにせよ、比較的軽症の薬疹の場合にはこの方法が試みられ成功する場合もありますが、重症の薬疹でこの脱感作法を行うのは極めて危険ですので、試みられたことはないと思います。

# 薬疹にならないためにはどうしたら良いでしょう?

これには良い方法はなく、極論すれば薬をなるべく飲まないようにするしかないと思います。しかしそうも言えないので、内服する薬はなるべく少なく、短期間にとどめることを原則にすべきだと思います。とくにウイルス感染時には(ウイルスに直接効く薬は殆どないので)、なるべく多種類の薬を飲まないようにすることが重要です。しかもその際に一度止めた薬を、また飲み始めるといった不規則な飲み方は感作を起こしやすくすると言えます。

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